2026年新gTLD募集 日本企業によるブランドTLD申請は61件――申請企業に見られる特徴
ICANNが実施した2026年新gTLD募集(Next Round)において、日本企業による申請件数は84件、そのうち自社の商標をトップレベルドメイン(TLD)とするブランドTLDの申請は61件に達しました。
国別のブランドTLD申請件数を比較すると、米国の151件に次ぎ日本は世界第2位の申請件数を記録しています。(第3位は中国の18件)。
申請企業・業界の傾向と特徴
1-1. 多様な業種からの申請
今回の募集では、金融、自動車、放送、製薬、不動産など、幅広い業界からブランドTLDの申請が行われました。
特に、2012年募集時には日本からあまり申請されなかった金融業界から、多くの企業がブランドTLDを申請しました。その他、自動車業界、テレビ業界、製薬業界など、著名企業の多くがブランドTLDを取得する見込みとなっている業界も見られます。
このような業界からブランドTLDが注目される背景には、不正アクセスや特殊詐欺、フィッシングへの対策の重要性が高まっていることがあります。通常のTLDでは、タイポスクワッティングや類似文字列の登録、ドロップキャッチといった手法によって悪用される可能性があるところ、ブランドTLDであれば、自組織とその関連組織のみがドメイン名を登録できるため、第三者によるなりすましや不正利用のリスクを構造的に排除できます。そのため、信頼性の高いオンラインにおけるブランド基盤として注目されていると考えられます。
1-2. 社名変更・ブランド再編を契機とした申請
ブランドTLDを申請した企業の中には、近年の社名変更やブランド再編の動きと連動していると考えられる申請も見られます。主な事例は次の通りです。
- 株式会社YUASA
※2026年4月に「ユアサ商事」から社名変更 - ゼネラル株式会社
※2026年1月に「富士通ゼネラル」から社名変更 - TISI株式会社
※2026年7月にTIS株式会社と株式会社インテックが合併し「TISI」に - 日立建機株式会社
※2027年4月より「ランドクロス株式会社」に社名変更予定
このような企業がブランドTLDを申請していることから、ブランドTLDを単なるブランド保護やドメイン名の管理手段として捉えるのではなく、オンライン空間において新たなブランドを確立し、イメージを定着させるブランド資産としての価値が見出されていると考えられます。
2026年新gTLD募集にてブランドTLDを申請した企業一覧
日本国内からブランドTLDを申請した企業と文字列の一覧は次の通りです。
(順不同)
| 組織名 | 文字列 | 業種 |
|---|---|---|
| 塩野義製薬株式会社 | shionogi | 医薬品 |
| 大正製薬株式会社 | lipovitan | 医薬品 |
| taisho | 医薬品 | |
| upsa | 医薬品 | |
| DMG森精機株式会社 | dmgmori | 機械 |
| 日立建機株式会社 | landcros | 機械 |
| MS&ADインシュアランスグループホールディングス株式会社 | msig | 金融(除く銀行) |
| SOMPOホールディングス株式会社 | sompo | 金融(除く銀行) |
| リコーリース株式会社 | ritres | 金融(除く銀行) |
| 株式会社クレディセゾン | saison | 金融(除く銀行) |
| 株式会社大和証券グループ本社 | daiwa | 金融(除く銀行) |
| 東京海上ホールディングス株式会社 | tokiomarine | 金融(除く銀行) |
| 野村ホールディングス株式会社 | nomura | 金融(除く銀行) |
| 株式会社みずほフィナンシャルグループ | mizuho | 銀行 |
| 株式会社りそなホールディングス | resona | 銀行 |
| 株式会社三井住友銀行 | smbc | 銀行 |
| 株式会社三菱UFJ銀行 | mufg | 銀行 |
| 三井住友信託銀行株式会社 | smtb | 銀行 |
| AGC株式会社 | agc | 建設・資材 |
| ダイハツ工業株式会社 | daihatsu | 自動車・輸送機 |
| トヨタ自動車株式会社 | century | 自動車・輸送機 |
| マツダ株式会社 | mazda | 自動車・輸送機 |
| 株式会社シマノ | shimano | 自動車・輸送機 |
| 川崎重工業株式会社 | kawasaki | 自動車・輸送機 |
| 株式会社YUASA | yuasa | 商社・卸売 |
| 三井物産株式会社 | mitsui | 商社・卸売 |
| 株式会社FOOD&LIFE COMPANIES | sushiro | 小売 |
| ALSOK株式会社 | alsok | 情報通信・サービスその他 |
| TISI株式会社 | tisi | 情報通信・サービスその他 |
| TOPPANホールディングス株式会社 | toppan | 情報通信・サービスその他 |
| エックスサーバー株式会社 | xserver | 情報通信・サービスその他 |
| セコム株式会社 | secom | 情報通信・サービスその他 |
| ぴあ株式会社 | pia | 情報通信・サービスその他 |
| ローランド株式会社 | roland | 情報通信・サービスその他 |
| 株式会社Cygames | cygames | 情報通信・サービスその他 |
| 株式会社NTTドコモ | docomo | 情報通信・サービスその他 |
| 株式会社TBSホールディングス | tbs | 情報通信・サービスその他 |
| 株式会社シロ | shiro | 情報通信・サービスその他 |
| 株式会社タカミヤ | takamiya | 情報通信・サービスその他 |
| 株式会社タマス | butterfly | 情報通信・サービスその他 |
| 株式会社テレビ朝日ホールディングス | tvasahi | 情報通信・サービスその他 |
| 株式会社フジテレビジョン | fujitv | 情報通信・サービスその他 |
| 株式会社メドレー | medley | 情報通信・サービスその他 |
| 株式会社博報堂 | hakuhodo | 情報通信・サービスその他 |
| 日本テレビホールディングス株式会社 | ntv | 情報通信・サービスその他 |
| 日本ビジネスシステムズ株式会社 | jbs | 情報通信・サービスその他 |
| 日清食品ホールディングス株式会社 | nissin | 食品等 |
| 日本たばこ産業株式会社 | jtg | 食品等 |
| 花王株式会社 | kao | 素材・化学 |
| 株式会社ADEKA | adeka | 素材・化学 |
| 株式会社カネカ | kaneka | 素材・化学 |
| 株式会社ゼネラル | general | 素材・化学 |
| 住友ゴム工業株式会社 | dunlop | 素材・化学 |
| 田中貴金属工業株式会社 | tanaka | 鉄鋼・非鉄 |
| コニカミノルタ株式会社 | konicaminolta | 電機・精密 |
| セイコーグループ株式会社 | seiko | 電機・精密 |
| ファナック株式会社 | fanuc | 電機・精密 |
| 株式会社SCREENホールディングス | screen | 電機・精密 |
| 株式会社JERA | jera | 電力・ガス |
| 信濃建物総合管理株式会社 | sokagakkai | 不動産 |
| 株式会社シノケングループ | shinoken | 不動産 |
※業種は東京証券取引所による17業種の区分を参考に当社で分類
「復活」したブランドTLD
今回、日本企業から申請されたブランドTLDの中には、2012年募集でも登場した文字列が含まれています。こうした事例からは、ブランドTLDをめぐる企業の戦略やブランドへの考え方の変化もうかがえます。
dunlop(住友ゴム工業株式会社)
「.dunlop」は2012年募集でThe Goodyear Tire & Rubber Companyによって取得されました。しかし、2025年10月に廃止されています。今回の2026年募集では、2025年に「Dunlop」の商標権を完全に取得した住友ゴム工業が「dunlop」を申請しました。取得が実現すれば、一度廃止されたTLDと同じ文字列のTLDが再度取得される初めての事例になります。
docomo(株式会社NTTドコモ)
NTTドコモは2012年募集で「docomo」を申請し、審査にも通過していました。しかし、最終的には取得に至る前に申請を取り下げています。2026年募集では、同じ「docomo」を改めて申請しています。
一度は取得を見送った企業が再び同じ文字列を申請したことは、ブランドTLDに対する評価や期待の変化の表れである可能性があります。
ブランドTLDも「Next Round」へ
2012年募集から14年が経過し、ブランドTLDを取り巻く環境は変化してきています。実際の活用事例も増え、前回取得を見送った企業が再度申請を検討したり、一度廃止された文字列が再度申請されたりする事例も現れています。こうした動きは、ブランドTLDの重要性が新たな段階に入りつつあることを示しています。
今後の注目点と取得後の活用に向けて
今回申請された日本国内からのブランドTLD申請61件は、現時点で文字列が一致している他の申請は存在していません。各申請者にとってはまずは一安心、といったところでしょうか。無事今後実施される各種審査を通過すれば、2027年後半~2028年にかけてブランドTLDとして利用可能な状態となります。
ブランドTLDの取得はゴールではなくスタートです。取得後の活用によって、ブランド価値の向上や利用者との信頼関係の強化につなげることができます。JPRSでは、ブランドTLDや新gTLD募集に関する最新情報の提供や、ブランドTLDの活用に向けたご相談を受け付けていますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。